大塚康生のおもちゃ箱2

というわけで熊谷に行ってきた。
目的はこれ。

大塚康生のおもちゃ箱展 in 熊谷
この度「大塚康生のおもちゃ箱2」の発売を記念し、関連する原画の展覧会を開催します。「大塚康生のおもちゃ箱2」掲載の作品を中心に、未公開原画を含む約100点を一堂に展示します。
 
http://www.shiga-web.or.jp/mvj/omochabako2/exhibition.html

上記リンク先に〔展示予定作品〕として書かれているのは、「TVスペシャル用キャラクター設定」「カレンダー用原画」「ルパン三世風魔一族の陰謀の絵コンテ」「漫画作品「ある雨の日の午後」原画・下絵」「公式HP大塚康生の峠の茶屋関連原画」等、ですがこのうち「ルパン三世風魔一族の陰謀の絵コンテ」は無く少々ガッカリ。
その代わり、というわけではないでしょうが、「侍ジャイアンツ」のキャラ表と、お蔵入りになった「ゴン」アニメ版の企画検討用絵コンテが展示されていました。特に後者は、もちろん田中政志のマンガのアニメ化なんですが去年からやっていたTVシリーズとはまた別で、企画があったことさえ知りませんでした。いやー、これ映像にして欲しかったなー。それともパイロットフィルムくらいは作ったんだろうか。
そして当然これを購入。

右の絵ハガキは会場近くの書店で「おもちゃ箱2」購入者先着20名にプレゼントされた直筆サイン入りのもの。

大塚康生のおもちゃ箱2
大塚さんが描いたルパン三世の絵だけを集めた本を作りました。
初出以降、再使用されていない作品、未発表の原稿や下書きなどを目一杯詰め込んだ、まさにおもちゃ箱のような本を目指して制作しました。
当初の予定から少し遅れましたが、ようやく皆様にお届け出来ることになりました。限定小部数発行の同人誌ということもあり、一般書店に流通しないため、通販のみでご不便をおかけしますが、大塚ファンには、必ずや喜んでいただける本に仕上がっていると思います。ご愛読の程、よろしくお願いいたします。
峠の茶屋 管理人 パノラマ堂拝
A5判・全128頁
掲載作品 大塚康生によるルパン三世を題材としたイラスト、下書き、ラフスケッチ、大塚康生の【WEB】峠の茶屋関連イラスト等、未発表原稿多数掲載。巻末に映像研究家・叶精二氏による一万字インタビュー、風魔一族の陰謀・大塚担当パート絵コンテを一挙掲載。
 
http://www.shiga-web.or.jp/mvj/omochabako2/index.html

引用だけで商品内容はおおむね説明できてるな。前「大塚康生のおもちゃ箱」(1996年)がとにかく何でもアリ(巻頭からいきなり子供の頃に描いた蒸気機関車のスケッチだったりする)だったのに比べると、「2」はほぼルパンだけなのでその点ではちょっと物足りない。ただ、「初出以降、再使用されていない作品、未発表の原稿や下書き」というわけで見ごたえは十分です(まぁ私は本を開く直前に展示で見ていたわけですが)。
また、インタビューや大塚氏自身の筆による記事もかなり興味深い。「「ルパン三世」覚え書き」では五右衛門というキャラの設計について書いているのですが、まず「五エ門と略すのが嫌いで、昔からわざわざ五右衛門とちゃんとした呼び方をしています」というあたりでディテールに対するこだわりを感じてしまいます。「彼の剣術が何流かについて考えてみたこともあります」とか、そこまで考えるのか!という感じ。
もちろん本業はアニメーターなので、「刃を下に向けて抜刀する時の動きを想像して描いたスケッチ」「逆手で抜刀してみるとこうなるはず」と、ふたつのスケッチが併せて掲載されているのですが、これも「一見リアルですが〜実写で殺陣の上手な役者さんに演技させてみるとまるで違うものです。いわば想像上のリアリズムですが、上手く出来れば実写のコピーよりも印象的な動きができます」など、これまたそこまで考えているのかと驚かされる。
巻末のインタビューは2012年5月に改めて「風魔一族の陰謀」と旧ルパン三世第4話「脱獄のチャンスは一度」を見返したうえで行われたもので、当時の制作状況や、今見て改めて思う作品評などを語っています。後者の原作との相違点について「看守が拳銃ぶら下げて来る筈がないし、瞬時に抜くのも無理がありますよ。漫画ではあり得る省略でも、アニメーションでは嘘臭くなってしまう」などというあたりは、またまた「そこまで考えているのか」!
そんなふうにディテールやリアリズム、理屈にこだわる大塚康生氏なのに、面白いことに不二子のバイクは「車種は特定してしません」とのこと。

バイクは車より細かなパーツの違いが多くて、面倒なんですよ。だから、不二子のバイクはこの後何度も出て来ますが、車種は一度も決めていません。一般的なバイクの造形です。

大塚康生のおもちゃ箱展 in 熊谷」は明日までなので、このエントリ読んで「じゃあ行ってみるか」という人はいないかと思いますが、「大塚康生のおもちゃ箱2」はまだ在庫があるはずですので、興味をもたれた方は上記URLをたどって入手されてはいかがでしょうか。