ウルトラマン・ジャミラ回、最後の台詞は「犠牲者」で確定

ウルトラマン』のなかでも第23話「故郷は地球」は特に人気の高いエピソード。当時の米ソ間の宇宙開発競争を背景に、国家の思惑の犠牲になる個人の悲劇を描いています。

その悲劇を思い切りストレートに描いているのがラストシーン、ジャミラの墓碑とその前でイデ隊員がつぶやく台詞。

A JAMILA (1960-1993)
人類の夢と 科学の発展のために死んだ戦士 ここに眠る
 
犠牲者はいつもそうだ……。文句だけは美しいけれど……。


はい、ここでは「犠牲者はいつもそうだ」と書きましたが(そして先日ファミリー劇場で放映されたHDリマスター版の字幕も「犠牲者」になっていましたが)、「為政者」にも聞こえる、あるいは「偽善者」だという人もいる。
どれでも意味は通るし、脚本段階に書かれていない台詞だったため、特オタの間では「犠牲者」か「為政者」か「偽善者」かは長らく議論になってました。
 
……議論が続いていたけれど、実はこれ、2003年にとっくに決着が付いてました。

他ならぬ佐々木守が書いたこの本、『戦後ヒーローの肖像』にはっきり書かれています。

何の注釈もなく「犠牲者」。この台詞、実相寺昭雄監督が現場で考えたものとも言われており、実際に言っている言葉は「為政者(ないし偽善者)」である可能性も無いわけではありませんが、脚本としてクレジットされているのは佐々木守ですから、その責任において確定と言っていい。
 
つまり、2003年に既に「犠牲者」で確定していたのですが、これが何故か特オタ間で共有されなかった(私も他人のことは言えないのですが)。
ざっくりググった範囲でも、ニコニコ大百科「ジャミラ」の項はわざわざ「ここの「犠牲者」の部分は「偽善者」「為政者」と言っていた説もある」と書いていたり、2015年4月5日付の2chの書き込みに「本当にそろそろ犠牲者偽善者為政者論争に決着はついたのか」とあったり。

それどころか、NHKがついこの前まで実施していた人気投票の中間発表でも、字幕は「偽善者」になっていたという。
http://www.nhk.or.jp/ultraman50/
https://twitter.com/fuu_cyodenji/status/749198396896911360
HDリマスター版の字幕によって公式の「正解」がフィックスされたわけですが、これまでどうして『戦後ヒーローの肖像』の記述がないがしろにされてきたのか(確認しにくいプライベートな場での発言ではなく、気になったその日のうちに市立図書館で確認できるレベルの記述)に興味を覚えます。



(2023年1月27日追加)
川崎市民ミュージアムで開催された実相寺昭雄 展(同館閉館後の所蔵は未確認)で展示されていた台本に、手書きで「犠牲者はいつもこうだ」と書かれていた旨、画像付きで確認されました。これでもう「脚本としてクレジットされている佐々木守の責任において確定」と言わなくてもよさそうです。