/推進剤=燃料という誤解

機動戦士ガンダムZZ」の後半あたりから、一部のモビルスーツはこれ見よがしの「プロペラントタンク」を装備するようになりました。

第3世代モビルスーツはジェネレーターの高出力化で固定武装が云々といったムダな設定がある割に、ひと目見て従来と異なる点、「それまでのMSは装備していなかったのに、どうして突然プロペラントタンクを装備するようになったの?」という疑問に答えてくれる設定は、多分ありません。

ま、そこらへんはどうでもよろしい。

ただ、他ではあまり聞かないスペシャルな語感がオタク心に響くのか、「プロペラント」という言葉が一人歩きして、それがどういうものか知らないまま使われているようです。いや、「日本語で言うと「推進剤」」ってとこまでは知っていて、でもどういうわけかそこで知識欲が止まってしまう人が異様に多い。でもって、「ロケットとはイコール燃料を燃やして火ぃ噴いて宇宙を飛ぶもの」という認識しかないから、故に「プロペラントタンクとは燃料タンク、推進剤とは燃料」と誤解している。

ま、推進剤とは何かなんてのはムダ知識の部類で、これまた割とどうでもよろしい。

……一応書いておくと、ガンダム世界の場合のプロペラント(推進剤)は「核融合の熱で膨張させて噴射させる噴射物」です。そう書かれている公式設定は不勉強につき見たことがありませんが、「熱核ホバー」がありますから(ドムで実現された作画枚数を減らすテクニックですね)、熱核ロケットなのは間違いない。熱核ホバーは空気を吸入しますが、真空の宇宙ではその代わりにプロペラントを積んでいる、といえばガノタにはかえってわかりやすいでしょうか。プロペラントとなる物質は、リアルでは液体水素が考えられてますが、ガンダム世界で何かはわかりません。いずれにしても、燃料ではない。

ほら、ムダ知識だったでしょ? 読み飛ばされても構いません。

しかし、単に知らないだけならどうでもいいのだけれど、「プロペラント(推進剤)=燃料」と根本的なカンチガイをしたまま、その前提で微に入り細をうがつ「考察」を積み重ねてしまっている人をみると、さすがにどうかと思うわけです。

モビルスーツ・ヅダの「土星エンジン」、「従来の推進剤より遥かに重い鉛や亜鉛ビスマスなどの重元素を推進剤として使用する」という設定について、こんな考察を見つけました。
http://blogs.yahoo.co.jp/ms05kyuzaku/43206816.html

推進剤は“燃料+燃焼剤”で、構成される。このうち燃焼剤は、例外なく酸素若しくは酸化剤が用いられるので、土星エンジンに用いられる鉛,亜鉛ビスマスは“燃料”の方に含まれる。つまり、土星エンジンは『鉛,亜鉛ビスマス等の重元素を燃料に用いるエンジン』ということだ。

以下延々と考察が続く大変な労作なんですが、これ、「推進剤は“燃料+燃焼剤”」という前提から間違っています。ていうか、重元素を燃焼させる時点でカンチガイに気付いても良さそうな気がするのですが…(考察を重ねるまでもなく変でしょ)。この設定って「従来のプロペラント中に大質量の物質をうまいこと混合して、噴出時の反作用(=推力)を大きくした」ということですよね。

それにしても不思議なのは、この人くらいのガノタなら熱核ホバーを知らないはずはないでしょうに、それがどういうものかは知らないらしい、ということ。知っていれば「推進剤は“燃料+燃焼剤”」とカンチガイしないと思うのですが…。これもまぁ言葉だけが一人歩きしてるんでしょうが、なんかこうムズムズします。